キャセイは約3,100億円の赤字!
香港の航空会社であるキャセイパシフィック・グループが、2020年度(1~12月)決算を発表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限が、いち早く始まった中国でしたが、その影響を色濃く受けたのに加え、元々、昨今の香港情勢の変動なども影響して赤字へと転落し、リストラ費用や保有航空機の評価損を計上したコトで、過去最大の赤字額になっています。
項目 | 単位 | 2020年 | 2019年 | 前年同期比 |
売上高 | 100万香港$ | 46,934 | 106,973 | -56.1% |
純損益 | 100万香港$ | -21,648 | 1,691 | -23,339 |
1株あたり損益 | 香港セント | -424.3 | 39.1 | -463.4 |
配当金 | 香港ドル | 無配 | 0.18 | -100% |
売上高は、469億3,400万香港ドル(約6,767億8,000万円)。
日系企業と比べて早めにコロナ禍の影響が出ているコトと、国内線を持たない香港拠点の航空会社の特徴を考えると、寧ろ、よく前年同期比で56.1%減に留めたな…と言う感じがしなくもないですね。
内訳的には、旅客事業での売上高は、113億1,300万香港ドル。これは前年から比べると84.3%の減と言う数値なので、ほぼ通年に渡って旅客需要が蒸発したと言えるのでしょう。
一方で、貨物事業は、245億7,300万香港ドルの売り上げ。これは前年比で見ると、16.2%増と言う結果で、貨物のみ搭載の旅客便の運航や、4機のボーイング777-300ER型機は、エコノミークラスの客室の一部の座席を取り外して貨物スペースを拡充するなど、貨物輸送能力の拡充を行なった結果が表れた形に。
最近のキャセイは赤字が続いていて、構造改革を進めた結果、ようやく2019年の上半期に黒字へと転換したばかりだったのですが、さすがに2020年は赤字。
しかも、216億4,800香港ドル(約3,121億6,000万円)と巨額の赤字計上です。
航空機の減損処理が40億5,600万香港ドル。
キャセイドラゴンの繰延税金資産の減損処理が15億9,000万香港ドルで、これを含めた事業再編関連費用が39億7,300万香港ドルを計上している形なのも、大きいですね。
検疫新ルールで現金流出、再び加速!
もちろん、キャセイとしても現金流出を減らすための措置を取っていて、輸送能力の削減を実施。
まず全体の46%に及ぶ82機の旅客機を香港からオーストラリアやスペインなどの駐機場所へと移すなどを実施。
設備投資も先送りにし、A350-900型機と1000型機は、2023年までの受領に先送り(本来は2020~2021年に受領予定)、A321neo型機も2020~2023年受領を2025年までの受領に延期するコトを決定。
さらにボーイング777-9型機の受領も先送りする予定でいたりします。

2020年10月には、年末までに約8,500人の削減とキャセイドラゴンを運航停止とする事業再編を発表。
それまで15~20億香港ドル程度の現金流出が毎月、あったが、10~15億香港ドルの流出まで改善するコトに。
ただ2021年2月20日から香港特別行政区政府が、香港を拠点に乗務する運航乗務員・CAに対する検疫措置を強化。
これは情味院にホテルでの2週間の隔離を義務付けすると言うルール。
大半の従業員は、3週間の勤務→ホテルで2週間隔離→自宅で2週間の休暇と言う勤務体系になっていると言う。
これにより輸送能力を縮小させざるを得なくなっており(旅客輸送で60%削減・貨物輸送で25%削減)、今後は当面、3~4億香港ドルばかり現金流出が膨らむ想定でいたりします。

回復ペースは不透明感漂う
長期的に見れば、まだまだ香港が持つ拠点性と言うのは、有益だと思うけれど、香港ならではのリスクも大きい中で、そもそもコロナ禍から抜け出せる傾向が全く見えなくなっている状態とも。
それは「キャセイパシフィック航空」だけの話じゃないけれども、国内線を持っていないと言うのは、やっぱり大きいな…と。
さらにキャセイの場合は、香港が持つリスクもある訳だし。
パトリック・ヒーリー会長も
「市場の状況は依然として厳しく、絶えず変化している。現金を維持するための全ての措置を継続する」
と声明で表明していると共に、「回復ペースは依然として不透明で、生き残るのに必死な状態が続いている」と言う悲壮感も漂うコメントを出していますが、やっぱり何とか生き残って欲しい…
またキャセイに乗って旅がしたい…
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