最大の赤字は日豊本線
JR九州が、線区別の収支を初めて公表しました。
既にJR各社の中では、北海道と四国が公表に踏み切っていますが、それに続くモノ。
今回、初めて公表に至った訳ですが、これは如実に地方の公共交通網としての鉄道が苦境に陥っていると言う裏返しなのかな…と。
具体的に見てみると、こんな感じ。
線区 | 区間 | 営業 km | 2018年実績 | ||
営業収益 | 営業費 | 営業損益 | |||
日豊本線 | 佐伯~延岡 | 58.4 | 396 | 1,070 | ▲674 |
都城~国分 | 42.2 | 442 | 833 | ▲392 | |
筑肥線 | 伊万里~唐津 | 33.1 | 39 | 232 | ▲193 |
宮崎空港線 | 田吉~宮崎空港 | 1.4 | 94 | 99 | ▲5 |
後藤寺線 | 新飯塚~ 田川後藤寺 | 13.3 | 76 | 255 | ▲179 |
久大本線 | 日田~由布院 | 51.5 | 708 | 962 | ▲254 |
唐津線 | 唐津~西唐津 | 2.2 | 33 | 262 | ▲229 |
豊肥本線 | 宮地~豊後竹田 | 34.6 | 44 | 392 | ▲348 |
豊後竹田~三重町 | 23.9 | 112 | 318 | ▲206 | |
肥薩線 | 八代~人吉 | 51.8 | 271 | 844 | ▲573 |
人吉~吉松 | 35.0 | 61 | 322 | ▲261 | |
吉松~隼人 | 37.4 | 120 | 479 | ▲359 | |
三角線 | 宇土~三角 | 25.6 | 157 | 430 | ▲273 |
吉都線 | 吉松~都城 | 61.6 | 90 | 430 | ▲341 |
指宿枕崎線 | 指宿~枕崎 | 42.1 | 43 | 448 | ▲405 |
日南線 | 田吉~油津 | 44.0 | 212 | 697 | ▲485 |
油津~志布志 | 42.9 | 38 | 436 | ▲398 |
一番、営業損益が悪いのが、日豊本線の佐伯~延岡。
続いて、肥薩線の八代~人吉、日南線の田吉~油津と続く感じ。
*但し、不通区間がある路線の収益は未発表
まぁ…
日豊本線の宮崎県内区間なんて、そもそも普通列車の需要が薄いの加え、長距離需要は、宮崎空港からの飛行機か、バスでしょうからね。
もう運行本数もほとんどナイし。
そしてそれがさらに利用者の減少を招く悪循環。
貨物が辛うじてあるから、一気に廃線論議が上がって来るとは言えないでしょうが、いつそんな議論が起きてもおかしくはない感じも。
データ元:JR九州 交通・営業データ
もう地方交通はズタズタ状態。
そもそもJRは今や民営業者。
特に九州は上場している訳で、株主もいる状態。
このまま赤字が増えて行く限り、こうした議論が出て来るのは、不思議じゃない。
だけれども、日本の地方行政は、未だに上下分離方式で、インフラ部分を持つコトに抵抗がある一方で、廃線には反対と言う傾向が強いし、そもそも高速道路や道路行政には熱心だが、鉄道は民営企業と言うコトもあってか、大っぴらな支援には及び腰である。
人口も減っているエリアになるので、先行きが見通せない中で、どう地方の交通機関を維持していくのかは、ここ数年来の話題だとは思う。
九州の場合は、スグに廃線に繋がる論議にはならない(それを前提にはしない)とは言うものの、吉都線と筑肥・指宿枕崎・日南線の末端部分は、さすがに厳しい話が出て来てもおかしくはない。
幹線ではあるが、損益が最悪だった日豊本線だって、同様だと思う。
個人的には、哀愁や同情では線路は残せない。
そう思っている。
ある程度の輸送人員を下回ったのであれば、それは次の交通手段へと移行すべきなんだとも思う。
鉄道がなくなれば、町の中心が亡くなり、より過疎が進むと言う話もあるが、そもそも今の日本の町づくりは、駅を中心にしておらず、役場や病院、学校が駅前にあるような町は、地方に行ってもほぼ皆無なのだから、そんな話は妄想に過ぎないとも。
旅をする上での鉄道と言う視点で見ても、長距離列車が次々となくなり、長距離都市間で体を成しているのは、新幹線の他には、ひたち・サンダーバード・あずさなど数少ない列車に過ぎないとも思うから、仮にこれらの路線がなくなったとしても、どこまで影響があるかな…と考えてしまう。
それでも残したいと願うのであれば、それなにの対案や企画を練って欲しい。
そろそろ1企業の努力ではどうにもならない。
今回の発表は、そう言う意図なのだと思う。
観光列車だけでは、残せない
観光需要の創出と言うのも、もちろん、打つ手の1つだと思う。
九州の場合は、観光列車を数多く走らせて収益化していると言う側面はあるけれど、それでも線区の赤字を補えるほどじゃない。
そもそも日本で観光を売りにしていて収益を確保しているのは、嵯峨野観光鉄道ぐらいじゃないのか。
あとは箱根登山鉄道ぐらいでしょうか。
どちらも大都市圏を後背に持つ事業会社だし、親会社もしっかりいる。
観光収益の高い大井川鉄道も鉄道事業で見れば、大赤字だろうし。
観光列車を、1日に何本も走らせられる。
もしくは付加価値の高い列車を、1日複数便、走らせられる。
そうでなければ、観光列車の収益と言うのは、そこまで…と言うモノなのかも知れないが(そもそもこの線区別の公表にどこまで観光列車分が計上されているのかは、謎ですが)、JR九州の場合、同じ列車を同じ線区で複数本を走らせるまでには至ってないのだから、ペイしないのも無理はない。
そう考えると、今回、公表された路線の中で、ホントに生き残れるのは、一体、どの路線なんだろう…
そう思ってしまう。
宮崎空港線以外は乗ったコトがある身としては、やっぱりそれでも残って欲しいとは思うんだけれど、それは旅人のエゴでしか過ぎず、議論や感情だけでは鉄道は残せない。
そう言う時代になって来たのだろうな。
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