セルビアとコソボが領土交換で関係改善?

コソボの「独立宣言」から10年の節目

中欧にあるコソボ。

コソボが「独立宣言」をしてから、2018年で10年目になる。

だが、未だにコソボを主権国家として承認している国は、114ヶ国に留まる。

EUの28ヶ国で見ても、スペイン・ギリシャ・スロバキア・ルーマニア・キプロスの5カ国は承認していないし、国連常任理事国で見ても、ロシアや中国も独立宣言を認知していない状態にある(日本は2008年3月に承認)。

そうした中で10年。

まだ10年なのか…と言う考えと、もう10年と言う考えがあるかと思うが、セルビアのブチッチ大統領と、コソボのサチ大統領の間で、EU仲介の下、ブリュッセルで会談がこの9月7日に開かれる。

そして議論の項目の中にあるとされるのが、「領土交換」だ。

セルビア系住民が多数派を占めているコソボ北部と、アルバニア系住民が多数派を占めるセルビア南部とを交換し、両国間の関係正常化に向けて動き出したいと言うのが、その狙いだ。

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アメリカが領土交換にGOサイン?

そもそもコソボ紛争が始まったのが、1998年。

対立は根強く、セルビアはもちろん、コソボの独立宣言を認めていない訳だが、その原因の1つに、コソボのセルビア系住民約15万人と、セルビアのアルバニア系住民約6万人の処遇がある。

ただ国境を線を引き直した場合、両国間で新たなる緊張感が高まる可能性はある。

また近隣諸国のボスニア・ヘルツェゴビナなど、未だに民族対立を抱えるエリアに影響を及ぼしかねないと言う懸念もある。

だが、そうした懸念を押し下げたのが、今まで反対をしていたアメリカが、“セルビアとコソボが合意出来るのなら、領土交換も排除しない”とボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)表明し、態度を改めたのが大きい。

どう言うつもりで態度を改めたのかは、定かではないけれども、そうした機運を生んだのだけは確かだ。

10年が過ぎたコソボの「独立宣言」だが…

両国のEUへの加盟は、この両国間の関係正常化が絶対条件。

だが、国民感情的には、どう見えているのか

実際、コソボではムスタファ政権(コソボ民主党とコソボ民主連盟の連立政権)が2017年5月に不信任案が可決されている。

それに伴う選挙では、中道右派連合が勝利するコトになり、ハラディナイ首相が誕生している。
ハラディナイ首相と言えば、コソボ解放軍の軍司令官であり、セルビアから見れば、戦争を戦った相手先。

そして2018年の1月には政治家のイバノビッチ氏が射殺されると言う事件が起きた。

イバノビッチ氏はセルビア系の穏健派と目され、アルバニア系住民との対話を重視する政策を持っていた政治家。
コソボ紛争では戦争犯罪で有罪判決を受けるモノの、控訴審で判決を破棄・差し戻しと言う経験を持つ政治家でもある。

経済的にも期待したほどの成長は見られておらず(海も無いし、大した産業もないのだから、そもそも当たり前なのかも知れないけれど)、失業率は高止まりしたままで、「独立宣言」から10年目を迎えた。

以前と違って対外的には平和になっている様にも思える。

だが、実際の所、平和は見掛けだけで、何かが起これば、マグマが溢れ出すんじゃないか…と思われるぐらいに、流動的な要素が残る中で、10年を迎えるコトになった。



領土交換は、次のステップに向かう為の1つの手段

ボクがこのエリアを旅したのは、2002年の2~3月。

まだコソボは危険度情報では最大の数値を示していたし、そもそもセルビアもモンテネグロとの「ユーゴスラビア」だった。

セルビアとモンテネグロが傍から見ると同じ国なのに、半ばモンテネグロが独立国家化している様な状況で、

“この国境はモンテネグロが管理している”
“こちらの国境は連邦政府が管理している”

みたいなのが混在していて、モンテネグロから入国してセルビアから出国すると、連邦政府が管理していない場所から入国するコトになるので、不法入国扱いになると言う状態だったし、コソボは散発的にドンパチしていた様な時期。

それから見ても、もう15年以上が過ぎている訳だけれども、その月日を経ても、まだ関係が正常化しない両国間。

隣国と言うのは、近くて遠い存在なのは、日本と韓国も同じコトが言えるのかも知れないけれど。

確かに領土の交換と言うのは、禁じ手の様にも思える。

だけれども、2国間が次のステップに進む為には、今のままではもうダメだろう。
賛成派も反対派もいて、複雑に絡み合う中で、次のチャレンジをして行く必要がある。

変わる為に、変えて行く。

表面上は落ち着きを見せ、同じ「ユーゴスラビア連邦」だったクロアチアなんかは、今や一大リゾート地と化している訳だけれども、新たなる火種を抑え込みながら、双方が痛み分けをしながら、次のステップに向かっていくと良いのだけれど…

[以下、追記(2018/09/12)]

7日の協議はセルビアの意向で中止に!

9月7日に予定されていた協議は、セルビア側の意向で中止になってしまいました。

やっぱり国内での反発が強く、協議に入れなかったと見られていますが、EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(外相)は、両首脳とブリュッセルで個別に会談を行っており、

「両国が数カ月以内の関係正常化に向けて努力すると信じる」

との声明を出したコトから、今後、改めて両国の協議を開催したいと言う意向の様です。

まぁ、“領土交換”なんて、なかなか一筋縄でいかないモノでしょうから、これからも紆余曲折はあるでしょうし、色々と反発は予想されるので、今後の展開がどうなるのかが全く読めませんけれど、平和裏に話が進んで、両国間の関係正常化に向けて進んで行けばいいのですが…

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