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『BANANA FISH』
著:吉田秋生
刊:小学館文庫
アメリカを垣間見れる少女漫画の名作
少女漫画です。
だけれども、全然、女性キャラが出てこない。
だから恋愛要素が全くない。
いや、BL要素はあるけれども。
ってか、ストーリー自体、かなり骨太だし、“少女漫画”と言うよりも、単に“少女漫画雑誌に掲載されていたマンガ”と言う方が正しい気がする作品。
旅行マンガかと言えば、そうでもない。
でも、ボクの中ではアメリカを垣間見れる作品。
アメリカの裏社会。
民族間の争い。
移民。
マフィア。
キッズポルノ。
そして、麻薬。
それが「BANANA FISH」と言う謎のコトバと、ニューヨークの街・人が繋いでいく。
どんどんクレッシェンドしていく長編マンガ
頭が切れて美しいギャング・アッシュ。
平凡な何処にでも良そうな日本人の英二。
遠く離れた2人。
英二がニューヨークで騒動に巻き込まれて行く中で、アッシュとの間に絆が生まれていく。
そして、ココロを許せる仲になって行く。
互いに互いが必要な存在になって行く。
極限の状態で組み合わさって、唯一無二の絆に変わって行く。
ボリュームのある長編作品。
だけれども、最近のマンガにある様な変な間延び感は皆無。
それどころか、終盤にかけて物語がどんどんと加速して行く。
重量感をどっしりと抱え込みながら。
長い映画を見ていたかの様な、そんな作品で、賛否はあるのだろうけれど、最後まで読み切った後の、喪失感から満足感と言ったら、他のマンガでは類を見ないモノがあった。
それだけの描写のチカラがあって、ストーリーに引き込まれて行く作品。
アッシュなんて、決して、リアルじゃない。
でも、まるでニューヨークでの長期ルポでも見ているかの様な、そんなリアル感が全体的にある。
華やかな街の裏側の歪み
連載が始まったのが、1985年。
連載が終了したのが、1994年。
かなり古い作品だけれども、作者の吉田秋生氏の40周年記念プロジェクトとして、2018年にアニメ化。
元々の原作ではベトナム戦争を下地にした作品だが、アニメ作品はさすがにイラク戦争に置き換えたりされているけれども、今、原作を読んでも、アニメを見ても、時代錯誤を感じる作品ではない。
確かに原作の最初の方は、ちょっと絵柄が古いんだけれども(後半になるにつれて、絵がどんどんシャープになって行くのは、長期連載の宿命なんでしょうかね)。
ニューヨーク。
行ったコトがある場所じゃない。
だからだろうか。
ボクの中のニューヨークは、この作品に出て来る様な、裏社会と薄汚れた街だ。
世界でも華やかな街の1つなハズなのに。
でも、華やかだからこそ、影が強い。
人が多く集まるから、陰が濃い。
だけれども、この作品がこの今のご時世にアニメ化されるぐらいに長い期間、支持を集めているのは、ハードな描写が…ではなく、ピュアで透明感に満ちた何かが根底にあるからなのだと思う。
未だに年に何回かは銃の乱射事件が起きる国・アメリカ。
連載当時も今も、アメリカが抱える問題と言うのは、あまり変わっていない様にも思える。
社会の歪みと言えば良いのか。
資本主義社会の歪みとも言えるのか。
強者だけが更なる富とチカラを得てゆく仕組みになっている国。
これからもアメリカの国と言うのは、“強さ”をひたすら求めていくのだと思う。
それが“アメリカ”でもあるからだ。
だからこそ、そこに歪みが生まれる。
そこからこぼれ落ちるモノがある。
誰かが勝てば、誰かが負ける。
それが分かっているのに、どうして人はこの国に惹かれるのだろう…
ふと、そんなコトを思いながら、アニメを見ながら読み返してみた。
と…
止まらない…
時間がある時に、読まないと、一向に手が止められない作品と言うのを、すっかり忘れていました。
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