逃亡犯条例改正案で大規模デモが香港で発生!
香港で、12日、市民が立法会(議会)や主要道路を塞ぎ、抗議デモを行った。
警察はそれに対し、催涙ガスやゴム弾を使用して対応すると言う事態に陥った。
発端は2018年に遡る。
香港人の若い女性が、旅行先の台湾で殺害されると言う事件が発生した。
この女性の交際相手が香港に帰国後、自白をしているが、殺人事件では訴追されず、結局、現在は、マネーロンダリング関連の罪で服役をしているが、現在、ケースバイケースで対応している刑事事件の容疑者について、香港が独自に身柄引き渡し条約を結んでいる20カ国以外にも対象を広げると言う内容の「逃亡犯条例改正案」が2019年2月に香港特別行政府によって提案された。
今回、デモの火種になったのは、この「逃亡犯条例改正案」であり、これによると、香港から中国本土や台湾・マカオと言った国や地域に対しての身柄引き渡しも初めて明示されたコトにある。
この改正案によって、香港が本土からの犯罪人の逃避先になると言う抜け穴を塞ぐコトが出来る訳だが、逆に、外国当局からの引き渡し要請を受けると、法廷での審理を得た後であれば、外国に身柄を引き渡せるコトにもなる。
「逃亡犯条例改正案」に反対する人々は、香港の住民が中国本土へと身柄を移され、不公正な裁判に掛けられ、必要な法的保護が受けられなくなる可能性があると言うのが、根本にある。
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一国二制度が骨抜きになりつつある香港
香港は、中国の特別行政区である。
元々はイギリスの植民地になっていたが、1997年に中国に返還された訳だが、2047年までは「一国二制度」と言う制度の下で、独自の司法制度を維持するコトが認められている。
が、改正案が成立すると、中国が香港の司法制度の独立性を脅かすコトにも、言論の自由を封じるコトにも繋がると言う。
と言うのも、中国では法律が恣意的に運用されるリスクも大きく、改正案が可決されると、民主活動家らが中国へと送られる可能性も高くなる他、香港在住の外国人も本土に移送されるリスクが出て来るコトになる。
一応、特別行政区政府は、引き渡しの適用は、7年以上の刑期を伴う重い犯罪容疑のみで、政治犯に対しては適用出来ないと言う改正案を提示している。
が、そもそも中国に置いては、政治犯は別容疑で逮捕されるコトが多く、実効性は担保されないと言われる。
確かに、法改正の必要と言うのは、あると思う。
今のままで大丈夫なのかと言われたら、そうでもないのは事実。
ただ中国政府の影響力は高くなると言うのも事実である。
そもそも現在の香港の行政府は、親中派で固められており、親中派でなければ、行政府の長にはなれないと言う仕組みにもなっている。
「一国二制度」。
これが少しずつ形を変えて、骨抜きになりつつあるのが、香港の現状なのかも知れない。
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雨傘革命との違いは?
ただそれはそれで容易に想像が出来たコト。
そもそも香港は、「中国」であり、「一国二制度」も時限措置な訳で、いつかは無くなる可能性のある代物。
少しずつ変わる香港。
それに待ったを掛けようとしたのが、2014年の「雨傘革命」と呼ばれた学生蜂起だったのかも知れない。
「雨傘革命」が求めていたのは、普通選挙の実施であった。
香港政府のトップである香港行政長官は、1,200人の選挙委員だけが投票権を持つ選挙で、いわゆる間接選挙な訳だが、この選挙委員の約80%以上が親中派で占められている訳だ。
香港基本法では、この制度について、必要であれば2007年以降に改正できるとしており、5年間の行政長官の任期を考えると、これまで選挙方法を改める機会があったのは、2回。
その2度目が2014年だった。
この年の選挙は新しい仕組みが発表されたが、これも政府が認定した指名委員の過半数の支持を受けた者のみが候補者になれると言うシロモノだったが為に、中国政府の意に沿った候補者が大半を占め、結局、形だけの普通選挙となった。
これが「雨傘革命」に繋がった訳だが、結局、デモは失敗に終わり、形だけの普通選挙すら撤回され、間接選挙が継続されるコトになった。
「雨傘革命」は、求めたデモ。
今回のデモと大きく異なるのは、その点だろう。
今回は、「逃亡犯条例改正案」と言うコトで、今ある環境を守るデモなのだ。
別に政治犯を対象としたモノではナイ。
だが、これを額面通りに捉える人はいないだろう。
かつて香港で中国政府を批判する書籍を多数揃えていた書店の関係者が突如、失踪した事件があったが、これも中国当局による拘束と捜査だったコトが、告発されている。
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香港の高度な自治が問われている?
「高度な自治」。
一体、何なんだろう。
ふとそう思う。
香港に自由はあるのか。
そう問われると、微妙な所だろう。
だけれども、別に中国返還前だって普通選挙ではなかった訳で、そう考えると、民主主義と言うモノは、香港にはずっと前から存在していなかったとも言える訳だ。
なので、香港にある「高度な自治」のベースは、「言論の自由」と「司法の独立」。
この2つから成り立つ訳だけれども、中国資本による香港メディアの買収や、反中内容の販売は少しずつ出来なくなっているし、司法の独立も民主派などに厳しくなっている。
それでも「言論の自由」が守られているのであれば、中国政府に対する批判が出来る。
それが出来るのは、この「逃亡犯条例」に中国が対象になっていなかったからに他ならない。
「言論の自由」を守る為の戦い。
今回のデモが大きくなったのは、香港の「高度な自治」を守る戦いなのだ。
だけれども、成功する可能性がどれだけあるのだろう。
ふと、そう思う。
9日のデモは、主催者発表では103万人と言う大規模なモノであった訳だが(この数字が正しいとも言えないが大規模であったのは事実だろう)、この先も16日にまた大規模なデモが予告されている。
中国政府は、今回のデモについては、「組織的な暴動」と言う見解を示した。
香港のキャリー・ラム行政長官も、「暴徒」と位置付けた。
幾ら大規模な人数が集まろうが、中国と言う大きなチカラを前にすればちっぽけなモノ。
それでも、すんなり引き下がる訳には行かない。
「香港」が「香港」である為に。
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何度となく訪れている街・香港。
それがまた揺れている。
何ともそれは悲しい事実なんだけれども。
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