夕暮れのホイアン
少しずつ、少しずつ、自分の影が長くなってくる。
黄色の建物は、さらに太陽の光を浴びて、輝きを増すと共に、陰陽が深くなって来た。
運河に出てみると、そこに1艘の小さな小さな船が、まさに今、漕ぎ出して、河の中央部へとゆっくりと進み始めていて、乗っている人が手招きをしながら、誘ってくる。
でも、別にそれはしつこい客引きではなくて、向こうも
“乗ってきたら小銭が稼げてラッキー”
くらいな感じで、全体的にゆったりとした街の空気の流れを壊すコトもなく、ただまったりとした空気感が、街を支配していた。
それはつい、歩きながら、ビールを飲みたくなる衝動に駆られる様な空気感。
車があまり旧市街の真ん中には入ってこないから、夕方の帰宅ラッシュと言っても、たかが知れているのだろうか。
もちろん、バイクは行き交っているけれども。
包まれる充足感
その内、運河の水の色が、黄金色に、ゆっくりと変わって行っていた。
あぁ、1日が終わるんだな。
そう思うと、ホッとしたと同時に、1日が何だかとても充実した感じに包まれた。
特に、何かをした訳でもない。
ただ夜更けに羽田から飛行機に乗って、そのままホーチミンシティからダナンに飛行機を乗り継ぎ、そしてタクシーでホイアンに入って…
それ以降は、ぶらぶらと街歩きをしていただけ。
ただそれだけなのだけれども、ムショーに充足感に包まれた。
その充足感が、“旅に出ている”感じとイコールだった。
旅に出たからこそ、得られる様な、そんな充足感に包まれながら、またぶらぶらと、運河沿いから旧市街の中を歩いてみた。
旅人で小さな路地は溢れていたけれども、別に、歩くのが難しいレベルではなく、賑わいを見せ始めている程度の人手。
それがまたちょうど良かった。
何だか、全てがちょうどいい。
この街は、ホントに、そんな感じ。
街の古さも、大きさも、人の多さも、賑やかさも。
古すぎず、新しすぎず。
小さすぎず、大きすぎず。
少なすぎず、多すぎず。
静かすぎず、うるさすぎず。
ちょうど、いい感じ。
夕焼けに包まれた空の色。
夕焼けに包まれた黄色の建物。
夕方まで見てきた街の色とはまた、少し違う。
でも、とても心地の良い色合いだった。
あぁ、無理してでも、来て良かったな…と。
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