大きく増収だが29億円の赤字!
旅行会社では最大手である「JTB」の2023年3月期中間決算が発表になりました。
これによると、売上高は3,863億円。
営業損益は284億円改善したモノの、47億円の赤字(前年同期は331億円の赤字)。
純損益は、前年に本社ビルを売却するなど311億円の特別利益があった反動で29億円の赤字(同67億円の黒字)で着地。
具体的に数値を並べてみると、こんな感じ。
項目 | 今期 | 前期 | 前年度比 |
売上高 | 3,862億5,100万円 | 1,798億4,500万円 | +214.8% |
営業損益 | ▲46億5,800万円 | ▲330億7,900万円 | ― |
経常損益 | ▲22億2,900万円 | ▲260億2,800万円 | ― |
純損益 | ▲28億9,400万円 | 67億3,300万円 | ― |
これを事業別で見てみると、こんな感じ。
項目 | 今期 | 前期 | 前年度比 |
国内旅行 | 1,668億900万円 | 571億3,000万円 | 292.0% |
海外旅行 | 99億9,100万円 | 10億2,200万円 | 977.6% |
訪日旅行 | 38億6,100万円 | 277億2,400万円 | 13.9% |
グローバル旅行 | 99億3,900万円 | 8億3,200万円 | 1194.6% |
旅行合計 | 1,906億0円 | 867億800万円 | 219.8% |
旅行以外合計 | 1,956億5,100万円 | 931億3,700万円 | 210.1% |
主力の旅行事業は、国内旅行が行動制限がナイ繁忙期になったコトから、大幅に売り上げが回復。
個人旅行は282%増。
団体旅行も戻り基調。
それに対して、訪日旅行は、水際対策がなかなか緩和されなかったコトから、38億円に留まると言う結果に(ここはオリンピックでの関係者需要がなくなったなどの要因もあったのかな?)。
旅行事業以外では、MICEとBPOが大きく伸びる結果に。
特に先行して需要が回復していた米国でMICEを手掛ける子会社のMC&A社が好調を見せている。
また国内では、コロナのワクチン接種の運営なども請け負ったコトで、収益はかなり伸びた形に。
さらにこれらの売り上げの回復に加えて、国内外の子会社・拠点の整理・人員削減・システムの刷新を行なったコトで、営業経費は減少に向かっている状態なのが赤字圧縮に寄与した形ですね。
旅行業以外の収益がどれだけ伸びて来るか
力強さがある決算内容ではないとは思う。
実際、ここ4年間の推移を見てみると、こんな感じ。
項目 | 今期 | 前期 | 2020年度 | 2019年度 |
売上高 | 3,863億円 | 1,798億円 | 1,298億円 | 6,860億円 |
営業損益 | ▲47億円 | ▲331億円 | ▲711億円 | 64億円 |
純損益 | ▲29億円 | 67億円 | ▲782億円 | 44億円 |
確かに赤字幅は大きく圧縮された感じだけれども、コロナ禍の影響がなかったころと比べても売り上げが半分強。
そしてまだ赤字が残ると言う結果な訳だから。
ただそれでも最大手の「JTB」だな…と言う内容になっていて、まだ本調子で戻って来ていない旅行事業の代わりに、旅行以外の事業での売り上げを取って来た感じにはなっている。
ただ正直、このコロナ禍だったからこそ、事業の変革ができるチャンスだったようにも思うが、実際、どれだけ変革ができたのだろうか。
まだその結果は見えて来ていない。
実店舗はかなり削減した。
元々、100近い店舗の削減を発表していましたが、2019年度には480あった国内店舗は、一気に減らして154店舗を削減。
それでもまだ、かなりの店舗網を維持していると言う感じもしますが、海外拠点は447拠点から187拠点まで削減していたりします。
これからも実店舗を核とした事業は、先細りになるのでしょうね。
もちろん、全てをネットに移行すると言うコトはないのでしょうが、ネット・高収益(高単価)の2択の中では後者の方に注力するのかな?と言う感じ。
で、代わりに収益の柱として成長まで持って行けるのか…と言うのが、「エリアソリューション」事業。
自治体・DMO・地域観光事業者の観光地経営などを支援する事業。
これはやっぱり「JTB」だからこそ手掛けられる事業だと思う。
現状は、320億円の売上高が上がっている。
ただ営業損失は1,049億円になり、赤字幅は増えているのが実情。
日本は観光地・観光地を抱える自治体にしっかりと数字が読めて企画ができる人材が足りていないのが実情だと思うので、苦しい現状でしょうが、なんとか支え切って欲しいなぁ…と願うばかり。
通期は黒字転換見込み
通期予想は、水際規制の緩和が計画よりも遅くなったコトなどもあり、売上高は計画を下回る水準になりそうとの予測。
ただ営業利益などは旅行事業の回復と、旅行事業以外の積み上げで、当初の計画通り63億円と見ており、最終損益も黒字に転換する見込み。
具体的には2019年度の営業利益14億円・経常利益25億円・当期純利益16億円を若干上回る見通しでいるとのコト。
ひとまず特別利益が無くても黒字が見えて来たと言う感じなのでしょう。
ただそれでもそもそもの2019年度の水準が低空飛行ですからね。
売上に対しての利益額が低すぎて、この部分の構造をどう打ち破って行くのか。
まぁ、そこが課題でしょうね、「JTB」だけでなく、日本の旅行会社的には。
中間決算は赤字脱却ならず…でしたが、着実に黒字に向かっている。
そんな内容と言えるのかも知れないですね、今回は。
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