今日こそ南米の旅の続きを書こうと思っていたのですが、ユナイテッド航空が、搭乗客を強制的に降機させて乗客にケガを負わせた事件を受けて、改善策を発表したので、そちらの話を。
この事件ですが、このblog上では取り上げていなかったのと、時系列と事実関係も改善策と合わせて発表になったので、改めて。
UA3411便でのオーバーブッキング事案のあらまし
事の発端は、2017年4月9日にシカゴ→ルイビル空港に向かうUA3411便に搭乗した乗客を、強制的に飛行機から引きずり下ろしたと言う事件。
UA3411便は搭乗開始前に1名分のオーバーブッキングになっており、その席分に関しては、Web・ゲートなどで便の変更などを募ったが、協力してくれる乗客は現れず、座席指定の割り当てがされていなかった1名に対して、乗客の意思に反して搭乗を拒否し、小切手と共に別便への振替を行った。
これで解決かと思いきや、UA3411便より前の便において、整備不良が起き、確実に整備の問題が解決するかどうかが不明瞭であると共に、解決をした所で、UA3411便より出発が遅くなるのが確実になる情勢だったが、この便にUAのルイビル→ニューアーク便を運航する乗務員が4人、搭乗予定だった。
この4人の乗務員が、ルイビルに迎えない場合、少なくとも1便以上(乗客100人以上)のフライトがキャンセルせざるを得ない状況になり、UA3411便にこの4名の予約が変更になり、その分のUA3411便への一般乗客の搭乗を拒否する必要性が生じてしまった。
乗客全員が座席についてから、800USドル分のクーポン券・その晩のホテル代・食事代の補償条件と引き換えに協力を募ったが、賛同を得られなかった為、乗客の同意を得ずに降機する乗客を探す手続きを開始し、4名を選んだ所、2名のカップルは便の変更を了承し、補償を受けた。
次に選ばれたのがダオ氏夫婦であったが、賛同を得ず、UAのスーパーバイザーがゾーン・コントローラー担当者に相談した所、シカゴ市航空局に協力を依頼するべきであるとの指示が出された。
その後、スーパーバイザーがマネージャーに状況説明を行おうと機内から離れた際に、ダオ氏は当局係員により、強引に機外へと降ろされたと言うのが、一連の流れだった様です。
つまりは別便の機材の整備不良に伴うオーバーブッキングに当局の力を借りたと言うのが、一連の話になる訳です。
ユナイテッド航空の10個の改善策だが…
UAがこの件に関して挙げた問題点は、
- 安全または保安上の問題がなかったにも関わらず、法の執行官に出動を依頼した点
- 乗務員の出発直前のフライトの再予約
→乗務員の予約は搭乗開始後であった - 補償が不十分で、他の交通機関や最寄り空港の利用などの多くの解決策の提供がなかった
- 困難な状況を想定した社員教育および権限移譲の不足
これに対して、UAが出した改善策が次の様なモノ。
- 法の執行官に協力を求めるのは、安全及び保安上の問題が発生した場合に限定する
- 安全または保安上の問題がない限り、既に搭乗した乗客に降機を強制しない
- 自主的に席を譲る乗客への補償額の上限を10,000USドルに増額
- カスタマー・ソリューション・チームを編成し、臨機応変な解決策を提供する
- 乗務員の予約は遅くとも出発の60分前までに完了する様に徹底
- 社員向けに毎年実施するトレーニングを追加
- 便の変更を自主的に承諾してもらえる乗客の自動登録システムの構築
- オーバーブッキング数の削減
- 現場で即座に解決出来る様に社員向けツールと権限の強化
- 紛失し、戻らなかった手荷物に関して無条件弁償制度の導入
…って、そもそもの問題は、オーバーブッキングにある様に思うのは、ボクだけなんだろうか。
別にUAだけがオーバーブッキングを行っている訳じゃない。
アメリカの航空会社だけにあり得る話ではなくて、世界的にあり得る話で、なおかつ、それは認められているモノと言うのが、現状なのだけれども、他の一般的な事象で考えてみると、やっぱりちょっとおかしい。
“来ない客を見越して、多めに予約を受け付ける”だなんて。
勿論、来ない乗客は確かにいるんだとは思う。
でも、その人達からも運賃を貰っている訳なのに、ダブルで売る訳だから(予約便の出発後の航空券の払い戻しも出来ない訳じゃないけれど)。
今回のニュースを受けて、オーバーブッキングはそれを見越して航空券を売るコトで、少しでも航空券の価格を引き下げる意味もあると言う論調の人もいたけれど、他の業界で考えてみたら、やっぱりおかしい様に思えてならない。
UAの場合、機材の大きさによって、最大3%程度のオーバーブッキングを行っていると言うが…
って、多くない?
3%って。
今回、UAが提示した改善策においても、オーバーブッキングの削減と言う文言はあるのだけれども、撤廃にまでは至らなかった訳で、やっぱり必要な制度だと言う認識が航空業界にはあるのだろうが、もし撤廃を決めていたら、英断だと思うんだけれども…
年間で5万人以上の乗客が、乗客の意思に反して降機しているアメリカ。
勿論、元々の乗客数が多いので、率にすると大きな数値ではないのは事実だけれども、何だか釈然としない気持ちが残ってしまう。
補償金の上限額が凄まじいっ!!!
が…
それを吹き飛ばしてくれるのが、今回の改善策。
だって、補償金の上限が10,000USドルですよ!!
10,000USドルっ!!
110万?
120万?
レート如何だけれども、そのレベル。
どう言うコトよ。
でも、UAの改善策のプレスリリース(日本語版)を読んでも、どうやったらMaxの補償金額になるのかは不明なままなんだけれどもね。
でも、この値段だったら…
オーバーブッキング、Welcome!!!!!!!!!!!
と思ってしまうやん。
でも、これって、UAで使えるクーポンとかだったら、あまり欲しくはナイけれどもね。
そして、こんなに大々的に補償額の上限の引き上げを発表したら、みんな、補償の金額が吊り上がるのを、待っていそうな気がするのは、ボクだけなんだろうか…
そして、結局の所…
金かよっ!!!!!!
いや…
金だな。
【関連リンク】
・ユナイテッドエクスプレス3411便に関する調査結果および改善策(日本語・pdf)
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