『英国一家、日本を食べる』

日本食はクールなのか

日本国内にいると、日本のコトを褒め称えるメディアが多い。

まぁ、さすがにどの国でも自分の国をけなすメディアはそう多くはないから当たり前だろうし、別に日本に限った話でもナイだろう。

確かに日本って、不思議な国。
落ちたと言えども、まだまだ経済的にも優れているし、文化的にも東洋であり、西でもあり、独自の文化を持っていて、それがミックスされた面白い国だと思う。

でも、世界で思われている程、当の本人たちは、日本が面白い国だと思っていないし、疲れる国だとも思っている気がする。

そして、別に“クールジャパン”と言われても、全然ピンと来ていない。
ってか、何で、日本が“クール”なのだろう。
ただフツーに生活しているだけなのに…

そんな国だと思うのだが、日本と言う国がもてはやされているのと同時に、世界では日本食も、地味に活気づいている。
一昔前まで、寿司なんて、生で魚を食べる文化さえ拒絶されていた気がするのだが、変わるモノである。

一般的に、ヘルシーだと言われている日本食。

ヘルシーだとか、クールだとか、全然分からない。
ただ“食べる”と言うのは、誰しもが毎日行う行為であり、あまりにも我々の身近にあるが故に、普段、日本食に対して、深く考えたりするコトも、基本的にはないから、実を言うと、食べたコトはあっても、良く知らないモノと言うのは、多い。
特に、昨今、スーパーでは原形が留められていない位に、それぞれの部位に加工されて販売されるし、冷凍保管の技術や栽培技術の向上によって、季節感もなくなりつつある。

それは、日本だけではない話なのかも知れないけれど。

日本人が気が付けない日本

さて、本書は、イギリスのフードライターである著者が、家族を伴って日本を巡る“食”の本である。
ラーメンや焼き鳥と言った、一般的なモノから、一見さんが入るコトが出来ない(そもそも存在すら知らない様な)お店まで、かなり幅広い日本食を扱っている。

料理家として知られる服部氏や辻氏とも会ったり、SMAPが出演している“スマスマ”まで出演しているのだから、その幅広さには驚かされるのと共に、“この人、一体、何者なんだろう…”とすら思ってしまう。

ってか、明らかに、フツーの人じゃない。

フツーの人だったら、外国人だからと言って、スマスマに出られる訳がないから。

でも、そんな偉ぶった感じは、微塵にも感じられないのが、この本の良い所でもある。
決して、上からでも下からでもない目線の高さ。
あくまでもフードライターとして、一介の外国人として、単に外国から来た家族連れとして、日本食に対峙している感じがある。

子供もそうだけれども、好奇心がやたらと旺盛で、知識の無い状態で日本食に出会った時の戸惑いや驚きと言った部分が、包み隠さずに描かれていて、こうした描き方は、中途半端に知識があったり、イメージが付いてしまう日本人では描けない部分で、読んでいると、つい惹きこまれてしまう。

“当たり前”になってしまっていたら、もう描けない所だと思う。

そして、日本人には言えない様なシュールなジョークが、所々に散りばめられているのにも関らず、洋書の翻訳本に有りがちな読みにくさを感じさせないのも、本書の特徴だと思う。

また、そのジョークも、そこまで品が悪いモノではなく(原書のままだと、そうでもないようなので、あくまでもこれは翻訳者の力量なのかも知れないけれど)、クスッと笑えるような類いのモノが多く、読んでいて思わず頬が緩んでしまう。

日本を描いている本は、外国語の書籍ならば、そこそこあるのだと思うが、それがまた日本語訳になっているモノとなると、そう多くはなく、改めて、日本と言う国が、どう見られているのかを知れる1冊になっているのと共に、自分たちにとっては“当たり前”であって、実はよく知らない部分を、ハッと気付かせてくれるような、そんな1冊だと思う。

ありきたりな日本絶賛メディアに飽きた方は、ぜひどうぞ。

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