三菱スペースジェット、形式証明取れないまま、開発断念へ!

形式証明が取れないまま、終了へ…

特に現時点で公式のプレスリリースなどは出ていませんが、『日本経済新聞』が、三菱重工業が「三菱航空機」で開発を進めて来た国産ジェット旅客機事業の「三菱スペースジェット(MSJ)」(旧・MRJ)から撤退する方針を固めたコトが報道されました。

まぁ…
今更?と言う感じもしますけれどね。
今でも細々と開発自体は続けられていたので、ようやく見切りをつけたと言う感じになるのかな…と(公式発表はまだですが)。

MSJは、2008年に座席が100席未満のリージョナルジェットの製造を事業化。
2015年に初飛行し、2019年にはMRJからMSJへと名称が変わり、2020年に“一旦、立ち止まる”と事実上の開発凍結が発表になっていました。

最盛期には3,700億円程度の開発費と、1,000人規模の従業員・技術者がいたが(三菱重工業側も含め)、現状は200億円程度の開発費(2021~23年度)は大幅に圧縮され、従業員・技術者も100人規模に。
2022年春にはワシントン州の拠点を閉鎖し、かなり縮小していましたが、それでも商業運航に必要な形式証明取得に向けた作業は、一応、続けられていました。

が、それも断念したと言うコトなのでしょう。

国産旅客機はYS-11以来の開発。
当初の計画であれば、2013年にもANAへの納入が予定されていたが、6度の延期。

開発費も当初は1,500億程度と言われていましたが、1兆円規模にまで膨れ上がり、三菱重工業は2020年3月期にMSJ関連の資産を1,224億円減損計上。
肝いりのプロジェクトだっただけに経済産業省も500億円の支援をするなどを行なってきましたが、やはり形式証明が取れないのでは、仕方がないと言うべきなのか。

JAL/ANAの代替機は?

国産を謳っていたコトもあって、JAL/ANA共に発注を掛けていましたが、ANAがMSJ90を確定10機+オプション15機。
JALはMSJ100を32機、発注。

ここまで開発が遅れていたので、機材繰りにも大きな影響を与えて来たとは思いますが、正式に断念になるとしたら、後継機はスグに手配されるのかな?

JALは、既にMSJを見切っていて、代わりはエアバスのA220かエンブラエルのE2であるコトを明らかにはしています。
ジェイエアのエンブラエル機材の更新なので、やはりエンブラエルのE2の方に分がありそうな気はするけれど、最小クラスのE175-E2の開発が一時中断しているのが気になるところ。
ただエアバスA220も最小クラスのA220-100。2クラスで100人程度の定員なので、ジェイエアの既存機であるエンブラエルE170-100の代わりとしては、ちょっと大きいのが悩ましい感じ。

逆に、ANAはANAウィングスが導入予定でしたが、そもそも必要かどうか…と言う話にもなり兼ねないですね。
一応、DHC-8-Q400の代わりと言う感じだったのだと思うけれど、ATR72-600とかが大きさ的には妥当なんだろうけれど…

ってか、この開発断念が正式に発表になったら、恐らく、遅延・納入断念の損害賠償って話になるのでしょうが、どのぐらいの金額になるんでしょうね。

JAL/ANA以外にも、既に確定発注をしているところもあった訳で、これからさらに損失額が生じると言うコトになる訳ですが、それを考慮しても、もう売れる見込みが薄いとの判断なのだろうね。

機材の大きさを考えれば、まだまだ伸びる余地の高い部分だとは思う。
世界的に見ても、ポイントtoポイントがトレンドになって行くだろうから、ハブシステムよりも機材の小型化が進んで行くとも思うのだが…

日本の技術力低下の象徴?

形式証明が取れなかったと言う甘さ。
それは大きいのだろうが、何よりも技術力の過信。

日本の企業の技術力が、やっぱり低下しているのかな?
そう思わざるを得ない案件のようにも思える。

確かに日本には航空機の製造に携わる企業も多い。

だけれども、そこに過信した結果が、延期のラッシュだったのでは?と。

何がダメだったのか。
どこに問題があったのか。

現時点で我々が知れるコトは、そこまで多くはない。
スコープ・クローズの緩和に対して、見通しが甘かったのも事実だろうが。

だけれども、この失敗から何かを学ばないと、“日本のモノづくり”の復権はないのだろうなぁ…と。

逆に、三菱は成功したホンダジェットから学ばなかったからこそ、失敗に繋がったのかも知れないですね。

ってか、今更だけれど、JALは失敗しそうだ…と、薄々、思っていたのかな?
2014年に、エンブラエルE170の追加購入とE190の新規導入を行なって、MSJと天秤に掛けつつ、しっかりと保険を掛けてましたからね(E170はその時点で既に一部稼働済み)。

そもそもローンチカスタマーはANAでしたが、JALの方がMSJに合った路線も多く、JALがANAと同時に発注を行なってもおかしくはなかったと思うし。

新機材の導入は、決して安い買い物ではないし、特にジェイエアのようにリージョナルジェット専用の会社だと、より経営に与える影響は大きいから、石橋を叩いて渡ったJALが正解だったとは言えそうだけれど。

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