JR九州大減便ダイヤ発表ー公共交通機関の在り方を考える時ー

福岡都市圏を含む、聖域のない大減便ダイヤ改正

JR九州の3月のダイヤ改正の内容が正式に発表になりました。

今回の九州のダイヤ改正は、過去に例を見ない「大規模な減便」ダイヤ改正。

閑散路線や区間だけに限らず、JR九州の22の全路線で1日当たり117本に渡る減便で、その中には、九州新幹線や、福岡都市圏も対象になっているから、まさに“聖域のナイ”減便となっている。

そもそもJR九州は国鉄民営化以降、本州の3会社に比べ、経営基盤が弱い中で、積極的な投資を続け、2016年には悲願の株式上場を果たした鉄道会社。

JR四国・北海道と九州と言う「三島会社」の中では、成功例と見られていたのに、一体、何があったのか。

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根本は鉄道事業の赤字

まず、JR九州と言えば、水戸岡鋭治氏と連携を取った観光列車を続々投入するなど、一見、華々しくは見えるけれども、売上高の4割にしか鉄道事業は過ぎなく、現在の経営の屋台骨は駅ビルを中心としたサービス関連と、マンション分譲などの不動産事業である。

多角化が進む既存大手民鉄ですら、鉄道事業の売り上げが4割に留まっている会社はほぼナイのに等しいが、本州のJR各社も大手民鉄も、今や「鉄道で稼ぐのではなく、付帯事業で稼ぐ」時代なので、この4割しか鉄道事業の売り上げがないと言うのは、問題ではないと言える。

が、他の私鉄と根本的に違うのは、この売上の4割を占める鉄道事業が赤字だと言う点である。

2017年3月期決算で見ると、鉄道事業は約87億円の赤字。

ここに九州北部豪雨や台風被害の復旧費用ならびに2016年の熊本地震の復旧費用が加わって来る(未だに目途が立っていないけれど)のに加え、2018年度には固定資産税の減免措置も失効するので、今後は毎年約55億円前後に渡る税負担が増える見込みになっている。

その中で、先手を打ったと言うのは、上場企業でもあるのだし、そもそも株式会社なのだから、正しい判断だとは言えるのだろう。

幾ら公共交通機関としての使命があったとしても、会社が共倒れになっては元も子もないし、JR北海道の様に“立ち行かなくなってから”では遅いと言うのもある。

まだ余力がある内に、少なくとも収支均衡に近付けておかなければ、これからの人口減少社会の中で、次の一手に出られなくなるのは、素人目でも分かると言う所ではある。

地方自治体は「反対」表明だけで具体策なし

ただあまりにも性急すぎた感じはある。

地方自治体の多くが反対を表明したのも、分かる。

が、九州はほぼほぼ高速道路の建設に目途が付いた段階になり、これ以上、手をこまねいている訳にもいかないのも実情。

そして反対を表明した地方自治体からは、意見だけで、「利用促進への具体策や振興策」は皆無だったのも、気になる所。

補助金を出せば、一時は落ち着くかもしれないが、何の解決にもならない。

「乗って残そう~」みたいな運動だけであるならば、やるだけムダに近くて、そこからどう「利用者」「自治体」「鉄道会社」が一体化出来るか…である。

過疎で人が少なくなっている今がラストチャンスに近い。
でも、結局、地方自治体からは「反対」表明だけ。

そこに住んでいない人がとやかく言うのではなく、普段から利用出来る人達が策を練って行かなければ、どうしようもないと言うのに。

地元がホントに必要だと思うのであれば、上限分離方式がもっと検討されても良い。
あまり需要はないかも知れないけれど、オープンアクセス方式も良い。
東京~能登のANAみたいに搭乗率補償の助成と言うのを鉄道に置き換えると言うのもアリかも知れない。

1つの地域だけではなかなか難しい部分こそ、連携が取れる自治体の出番だと思うのに、日本の地方自治体は、結局、「道路行政」に傾斜している訳で、今回の減便ダイヤをスタートに、「地方における公共交通のあり方」を地元の人と地方自治体がもっとちゃんと考えるべき時期に来ているのだと、思うのだが、どうもそう言う機運になっていない感じがある。

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地方における公共交通機関の在り方をもっと考えるべき

思えば、そう言う部分では第3セクター方式に転換した鉄道会社も、ようやくここに来て個性が見えて来た会社が出て来たように思う。

旧国鉄路線から転換した第3セクターだと、経常利益・最終利益共に黒字が出ている会社なんてほとんどない。

個性が出ている会社は赤字決算かも知れないけれども、やっぱり住民と自治体と鉄道会社とが「地方における公共交通のあり方」を考え、地道に動いてきた会社は、収支がそこまで悪くなかったり、地元負担で許容出来る範囲になっていたりしたり、収支が上向きになっている感がある(ひたちなか海浜鉄道や四日市あすなろう鉄道・えちぜん鉄道など)。

北海道や今回の九州の自治体の様に、「反対」だけではなく、「これからの町のインフラをどう考えるか」。

それはもしかしたら、「鉄道」だけに限らないのかも知れない。

バスだって、首都圏に辛うじて存在しているボクの今、住んでいる街も、「バス会社が撤退」を打ち出していて、何とか助成金の増額で食い留めていたりする訳だし、先日も岡山を走る両備グループの両備バスと岡電バスが、岡山市や倉敷市などを走る路線バス31路線を一挙に廃止すると発表している(これは既存の黒字路線へ競合他社が低価格で参入するコトへの反発もあるけれど)。

岡山の様な新幹線も止まる・空港もある県庁所在地ですら、もうそのレベルなのだ。

人口が減って行く中で、「公共交通機関」と言う名の町のインフラを、どう捉えて行くのか。

そう言う時代なのかも知れない。





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