『Suicaが世界を制覇する』

『Suicaが世界を制覇する』

著:岩田 昭男
刊:朝日新書

Suicaが世界を制覇する アップルが日本の技術を選んだ理由 (朝日新書)

日本の交通の乗り方を変えたSuica

今や関東に住んでいる限り、JRや私鉄、地下鉄に乗る際に、券売機で現金から切符を買って乗車すると言う人は、ごく僅かになっていると思う。

切符の電子化は、Suicaが誕生したコトで、一気に進んで、最早、かつての様に乗車の度に“券売機を利用する”と言う行為の不便さには戻れないと思う。

しかも、ガラケー時代からモバイルSuicaがあり、クレジットカードからオートチャージが出来、エキナカで広く使える様になったかと思えば、全国の交通系ICカードとも互換性を持つ様になった。

つまりはSuica1枚あれば、日本の交通系ICカードが導入されている様な地域のほとんどで利用するコトが出来る様になった訳で、これが実現したコトで国内を旅行する際も、随分と便利になった。

faustmp-1832 / Pixabay

そう言えば、最近、夏場に仕事が一緒になった若い人が、自販機を前にして初めて財布を忘れた自分に気が付いたと言うコトがあった。
昔ならば、電車に乗る時に気が付きそうなものだが、SuicaやモバイルSuicaを利用していると、出勤するまで財布がなくても大丈夫だったりするので、コンビニにも立ち寄って会計も済ませられるので、気が付かないモノなのだろう。

つまりはそこまで電子マネーだけで生活するコトが出来ると言うコト。

気が付かない間に、生活の中に、しっかりと組み込まれたと言うコトだろう。

まぁ、個人的には関西のPiTaPaの方が優れた機能を持っているし、利用者的には拡張性を持っている感じがするけれど、後払いでどうしても与信が必要なPiTaPaは利用者の取り込みに失敗をし、SuicaやPASMOは絶好調なのを見ると、自動改札やプリペイドカードでは先行していた関西のPiTaPaは失敗したと言えるのかも知れない。

そんなSuicaの進歩に焦点を当てた1冊。

Suicaの一発逆転へのサクセスを追う1冊

高機能すぎてガラパゴスと揶揄されたSuica。

国際標準化に失敗し、ローカルな地位に甘んじていたのが、iPhoneに搭載されるコトで起死回生一発逆転の様に、一躍、ガラパゴスを脱出した感じがある。

世界的にも珍しいiPhoneが国内のスマフォ市場を抑えている日本。
そこにアップルペイを上陸させたいアップル側の思惑と、クレジット業界。

その辺りが描かれている訳だけれど、良く考えると、これだけ身近になった電子マネーだけれども、いわゆる入門書やビジネス書としてはあまり描かれてこなかった様にも思う。

あるのは、“どの電子マネーやクレジットカードがお得か”と言う様な実用書ばかりで。

なので、結構、面白くは読めた。

ただ視点があまりにもSuica陣営側に偏っている感じはするし、実際にiPhoneに搭載されたコトがグローバルなんかじゃなくて、“Suicaがグローバル化した”と言うのであれば、海外の交通系で最低でも1ヶ所で相互共通利用出来る様になってからだろう。

Suicaが地盤を固めつつ、世界標準化になれない間に、世界の交通でもIC乗車券化の波は訪れている訳で。

JESHOOTS / Pixabay

またアップルペイをやけに持ち上げている感じがあるけれども、実際の所、アップルペイは残念なぐらいに盛り上がっていないと言える。

電子マネーの筆頭と言えば、交通系のSuicaに流通系のnanaco・WAON・楽天Edyの4陣営であって、そこにアップルペイだのクイックペイなどは入って来ていない。

幾ら、モバイルSuicaの加入率が向上したと言っても、それまでが低調過ぎただけの話で、この先も伸びるかと言えば、もっと仕掛けが欲しい所だし、それを海外に売り込むシステムが今のJR東日本にあるのだろうか…とも思う。

もちろん、技術的に見ればSuicaは便利だし、日本の移動手段における決済を変えたツールではあるけれども、ようやくこの春から一部区間の新幹線に乗れるようになるぐらいで止まっている様なシステムでもある。

海外の交通系ICカードの中には、ICカードを利用するコトで、かなりの割引が行われていたりするのに比べて、顧客へのサービスと言う点でも先進している訳でもない。さらにソフト面で言えば、流通系はそれぞれの電子マネーに自社チェーン・加盟チェーンを加えて、独自の文化流通圏を作っているのに対して、Suicaは未だに駅の外には出れていないのが、致命的な所でもある。

限られた紙面の中で、Suicaをヨイショした感じがちょっと残る。

つまりは、客観性に欠ける。
そして、利用者目線がある訳でもない。

そんな感じが途中からしてしまう。

少なくともタイトルの『Suicaが世界を制覇する』と言うのは、今の所、1度も実現したコトもなければ、実現への道もまだ全然開けていない訳で、誇大すぎる感じがある。

副題に“アップルが日本の技術を選んだ理由”とあるけれども、選んだのは日本国内でのサービスなだけだし。

でも、ビジネスのサクセスストーリーとその裏側として読むのであれば、案外、面白い。
素材が身近なだけに知っていそうで、知らない部分も多いので。

またシームレス社会の実現に向けて、Suicaが有能なツールであるのは、確かなコトでもあるので、技術面だけでなくて、これからどうやってSuicaをブラッシュアップして行くのか。

そう言う興味が惹かれた1冊でした。

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