『フィリピンパブ嬢の社会学』
著:中島 弘象
刊:新潮新書
久しぶりに本の紹介~。
いや、最近、読んではいるんですけれども、通勤時間がゼロになってしまったので、なかなか読み終わらないままで…
まぁ、地道に読んで、地道にアップはしていきますけれどもね。
研究対象なのに、恋に落ちた迷作(笑)。
お金がナイ国際政治学専攻の大学生が、調査対象として選んだのがフィリピン。
やがて大学院に進み、そこで調査として出向いた名古屋のフィリピンパブで、調査の対象であるフィリピン人ホステス嬢に恋に落ち…と言う話。
“社会学”と銘打っているけれども、全然、飾った感じに仕上がっていなくて、リアリティがあるルポタージュ。
日本の裏社会の一部。
偽装結婚の実態。
フィリピンのホステスの生態学。
フィリピンにおける国際送金経済。
そして、恋愛。
いや、研究対象なのに、恋に落ちちゃいかんやろ(笑)。
まぁ、フィリピーナ、かわいいモンね。
そんな色々な内容が、ギュッと1冊にまとまっている感じ。
そう言えば、昔は、旅をしていると、“日本に行くのどうやってビザを取れるか”“身元保証人になって欲しい”なんてコトも、時々、話されたけれど、さすがに最近はめっきりとそう言うのも減った気がするが、まだまだ“日本で働く”と言うコトを目指す人は少なくない。
日本が幾ら不景気だとしても、まだまだ物価や賃金が安い国々に比べれば、稼げる国なのだ。
そうした中で、興行ビザが取れなくなった現在の日本に向かう為に、そのビザを取る為に、偽装結婚をし、フィリピンから日本にやって来た女性たち。
日本の法律にも守られるコトなく、劣悪な環境下においても、それぞれが支え合い、補い合いながら働き、日本社会で見れば少ない収入から送金をする毎日。
21世紀になり、暴力団に対する社会的な圧力も強まる中、こうしたシステムが未だに成り立っているコトに、違和感すら覚えてしまうし、“何となく分かっていたコト”だけれども、本著では、実際に生々しく金額なども明記されていて、日本の闇の一部をしっかりと描かれている。
フィリピン側についても、家族観であったり、国際送金経済による内需の下支えと言う社会学の側面にも触れている。
そこに、つい頼りなく見える収入減の乏しい学生である主人公を応援したくなる様な恋愛小説的な側面もしっかりある。
それだけてんこ盛りなのに、新書のボリュームに収まっているので、展開もスピーディーだし、読みやすい。
2時間ぐらいでサクッと読めたのですが、読後感も、“ほんわか~”と言う気持ちを新書では初めて覚えたかも。
いや、コレ、文庫でも良かったんじゃない?と、何となく思ったりもしたけれど、まぁ、面白かったから良いんです。
松本仁一氏が実質的な編集者!?
解説として最後に松本仁一氏による一項がありました。
ピースボートで出会って以来の仲らしいのですが、何だか、とても久しぶりにお名前を拝見したなぁ…と言う感じ。
実質的な編集をやっていらっしゃられた感じの記載があるのですが、松本氏の著作も『アフリカを食べる/アフリカで寝る (朝日文庫 ま 16-5)』『カラシニコフ I (朝日文庫)』シリーズと、ホントに勢いよく読めた作品が多く(個人的には、中身を見なくてもタイトルと著者名で購入してしまうぐらいの人)、それなのに中身が濃い…と、そう言う部分も共通しているなぁ…と、何だか妙に納得してしまいました。
久しぶりに松本氏の著作も読み返したくなったなぁ…
ただ松本氏の著作よりも、社会学的な要素は薄い気がしますけれどね。
ってか、社会学と言えば、社会学だけれど…ぐらいな。
だから、そうした固い感じのを期待していると、完全に肩透かしですけれど。
コメントを残す