ネパール人になった日本人
ネパールと言えば、大体の人は、エベレストを思い描くだろう。あとは、カトマンドゥとポカラぐらいだとは思う(もしかすると料理を思い描く人もいるのかも知れないけれど)。
観光地としては、案外、名高い国である。
だが、その実態としては、まだまだ貧しい、発展途上の国である。
そして、アジアの国としては有数の政治情勢が不安定な国である。
しかも、その政治情勢の不安定さが、つい最近まで続いていて、政治が機能していないコトが多い国でもある。
そんなネパール。
マオイストが支持を集める中、制憲議会選挙に打って出た日本人がいる。
いや、日本人だった男と言う方が正しいのかも知れない。
国籍すら日本からネパールへと移し、議会選挙に打って出たのだ。
それが本書の主人公である宮原 巍。
今から40年ほど前。
ネパールのエベレストやアマダブラムを背後に見渡せる場所にホテルエベレストビューと言うホテルを建てた。
富士山よりも高い標高。
今よりもさらに貧しさの色濃い状態。
そんな時代、そんな環境。
そこに至るまでの経緯は、本書ではどちらかと言うと、さらりと描かれる程度(宮原さん自身が『ヒマラヤの灯』と言う本を出していて、こちらに詳しく描かれているが、残念ながら同書は既に、絶版になっているので、入手困難かと)。
それからさらに新しいホテルを建設したが、どうして選挙に打って出たのだろう…
国籍まで変えて。
終わりなき挑戦。
そう言う一言で片付けていいのか。
何だかそんな気にもなる。
いや、宮原さんの挑戦は、物凄いコトなのは事実として、よ。
あくなき挑戦の源泉はどこに?
そもそも、南極観測・グリーンランドの探検から始まり、還暦になってもエベレスト登山に挑戦した宮原さん。
精一杯に生きている。
ただそれを貫いているだけ。
そうなのかも知れない。
あくなき挑戦。
そう言えば、何ともカッコいい。
でも、きっともっと泥臭い。
土の匂いがして、水が流れる音がして…
そんなネパールと、排気ガスがこもって、絶えない喧噪のネパール。
その狭間で、ホテルを造り、絶えず何かに挑戦している主人公。
でも、何処にそのパワーがあるのか。
その情熱の根源は何処にあるのか。
その理由を知りたくて、丹念に読み返したくなる1冊。
逆に言えば、その辺りをもう少し深堀りして欲しかったなぁ…とも思える1冊。
ただあまりネパール関連の本は多く出版されないので、そう言う意味でも稀有な本かも。
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