初めての海外1人旅の記憶と言うのは、なかなか消えないモノがある。
それは何度となく海外へと旅をしていても、決して上書きなされるコトのナイ記憶だと思う。
もちろん、細部は時の移ろいと共に、少しずつ忘れて行ってはしまうモノだけれども、それでも、その時に感じたモノとかは、なかなか消えるコトがナイ記憶になって行く。
1人で旅をするからこそ…なのかも知れないけれど。
初めての海外1人旅の記憶
ボクの場合、初めての海外1人旅と言うのは、タイだった。
いや、“タイだった”と言うよりも、寧ろ、“バンコクだった”と言う方が正しいのかも知れない。
単に、何となく、“バンコクへ”。
今の様に、ネットが普及する前の話で、今からすると信じられないのだけれども、なかなか海外の旅の話であったり、情報と言うのが手に入りにくかった頃の話だ。
もちろん、80年代やそれ以前と比べると、断然、情報はあったし、海外へと旅に出る人は多かったのだけれども、それでも、今みたいに気軽に情報がいつでも手に入ると言う様な時代ではなかった。
ボクが初めてバンコクに行った時、ボクはほとんど情報を持っていなかった。
何なら、ガイドブックすら持っていなかった位だし、そもそも“バックパック”と言うよりも、寧ろ、“リュックサック”位の荷物しか持っていなかった。
そして、知っていた情報と言えば、
- カオサン通りと呼ばれる通りに行けば、安い宿がある
- カオサン通りには59番の赤いバスで空港から行ける
- 59番の赤いバスは、空港の前の通りを走っている
この3つだけだった。
今でこそ、“カオサン”と言えば、タイの方にも通じるエリアになっているけれども、当時はまだチャイナタウンも健在だったし、そもそもカオサン自体も、今ほど、広がっていないエリアだったけれど、とりあえず、59番の赤いバスに乗れば、そこに行けると言う情報だけは、手にしていた。
深夜にドンムアン空港に到着して、空港前の大通りで赤い59番のバスを待ち、そして乗る。
クッションは悪く、窓は開けられ、ムワッとした空気が一気に身体を包み込んだ…
そんな感覚は、今でも覚えている。
“これが、アジアの空気か…”
と思ったコトも。
なので、海外1人旅の記憶は、この空港からの赤い59番のバスから始まっているし、空港が新しくなった今でも、バンコクに行くと、未だにエアコンが付いていない赤いバスを探してしまう自分がいたりします。
バンコクのバスがギュッと!
この本は、そんなバンコクのバスの話をまとめた1冊。
どちらかと言えば、薄い1冊なのだけれども、やたらと濃ゆい。
ただ単に1つの路線を、ほぼ端から端まで乗り通すだけの話が幾つか。
バスの路線分の小さな旅をまとめた1冊。
ただそれだけなのに、やたらと濃ゆい。
それは写真がふんだんに使ってあるからなのかも知れない(でも、大きく見開きの写真は、皆無なのだけれど、各ページの上下にこれでもかと言う位、写真が掲載されている)。
それとも、現地に住んでいたからこそ、感じ得るモノが、ギュッと凝縮されているからなのかも知れない。
何が理由なのかは分からないけれど、とにかく、何だか濃ゆいのだ。
取り上げられている路線も、観光でバンコクを訪れるだけでは、利用する機会もナイ路線がほとんど。
それでいて、読みながら、ふと目を閉じると、その空気感や、匂い・けだるい話し声とかがまるで聞こえて来るかの様な、そんな話ばかりが集められているのだ。
別に、ガイドブックでもなければ、バンコクの見所が紹介されている訳でもないのに、バンコクの、その喧噪が伝わって来るから、不思議。
濃ゆい。
でも、それでいて、薄すぎず・重すぎず・軽すぎず…
その絶妙なバランスも何とも言えない感じで、バンコクでバスに揺られたコトがある人ならば、しっかりとバスから見た車窓や、バンコクの景色を思い出させてくれるのも、不思議な所。
自分も読み進めながら、つい初めてバンコクを訪れたあの時のあの旅のコトを、思い出してしまった。
あれから幾度となくバンコクを訪れている。
でも、やっぱり行くたびに思う。
バンコクのバスが、ボクの旅の原点なんだなぁ…と。
そして…
またバンコクに行きたくなるから、不思議。
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