旅先の街を好きになる理由

ある街の夜更け

19時過ぎに夕食を食べに外に出る。

すっかり暗くなった街は、帰宅ラッシュの真っ只中。

人を縫うように避けて通る。

治安はそんなに良くはない。
別に誘拐だとか、テロだとか、そう言うのは、聞かないけれども、スリは良くある話だし、そもそも南米は、治安の悪い場所が多くて、夜中に一人で気軽に出かけるのは、いささか疲れるんだけれども。

食事が終わって、決まって向かうのは、市場。
晩酌用にまずはお酒を買う。
ビールにする時がほとんどだけれども、時々、ラム酒。
しかも決まって、一番安いヤツで、身体に悪いんじゃない?と思えるような味わいのヤツ。

別に、日本でラム酒を飲んでいた訳ではない。
と言うよりも、日本にいると晩酌をする習慣もないし、日本酒もそう飲まない。

でも、こっちに来て、クイッと飲むと、身体が急速に火照って来るのが、止められなくなった。

こんなに酒飲みだったっけ??と自分でも思うけれども、テレビもないし、特に宿に帰ると旅人と語らうだけで、やるコトがなく、自然と口がお酒を求めている状態。

あまりにも安いラム酒を選らんで買うので、店主も最初は苦笑いしていたけれども、最近は、行くと安いのを自然に見繕ってくれる。

別に笑顔のある接客でもない。
毎回、閉店間際に駆け込んでくる、得体の知れない外国人(しかも、アジア人)で、スペイン語も片言しか話せないんだけれども、酒が切れると買いに来る…と言う感じに近いんだけれども、近すぎない距離感が、心地良い感じ。

続いて、パンを買いに行く。

朝食は宿の旅人は基本的に、サルテーニャを食べに外に出掛ける人がほとんどなんだけれども…

朝、外に朝食を食べに行くのが、どうも面倒。
サルテーニャは確かに、美味。

Hans / Pixabay

作りたてだったりすると、2個もあれば、用が済んでしまうんだけれども、朝はゆっくりしたい…と思うと、自然に、パンを前日の内に買い込んでおく必要があった。

そのパン屋は市場の片隅に籠を出して売っていると言った、路上販売。
ちゃんとしたお店じゃない。

そして、お世辞にもそこまで美味じゃない。

でも、毎日3個、同じパンを買っていたら、その内、売り切れそうな時でも、3個だけ、別個に取っておいてくれる様になった。

この街は、物価が安い。
でも、観光客が好むような見所がある街では、決して、ない。

だけれども、不思議と吸い寄せられてしまった。

異国の、その街を好きになる理由

同じ場所に長く滞在していると、“毎日、何をしているんですか?”と聞かれたりもする。

別に何もしてない。

旅に出ているからと言って、毎日、毎日、何かをしなきゃいけない訳でもない。
勿論、何もしていない訳ではないけれど。

少しずつ旅が日常になって行ける。
そんな街が好きだし、そんな旅が好きなんだなぁ…と言うのに、改めて、この街で気が付いた。

観光地に行くのも嫌いじゃない。
でも、少しずつ日常に変わっていく旅の方が好きなんだなぁ…と。

旅人を旅人の目線で見てくれるけれども、特に何も旅人に求めない感じ。
気に留められていないと言えば、そうなのかも知れないけれども、旅人だからと言っても、ボラれるコトもなく、かと言って地元の人と同等の扱いになる訳でもない。

ボリビア・ラパス。

それからビールを瓶で2本買って宿に戻って、ラム酒と共に晩酌。
そんな毎日だった。

何かがある訳でもない。
でも、それでも良いと思えた。

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