最後の夕焼けは、一番のキレイさだった
あとちょっとでポルトベーリョ。
到着は、確実に日没後になるし、もしかしたら午前1時の夜行バスにも間に合わないかも知れない。
でも、そんなコトを忘れさせてくれる様な夕暮れが、今日は広がっていた。
波の立たない川に静かに、波を起こす船。
その先に見えて来る森の向こうに、太陽が静かに沈んで行く。
目に見えるぐらいに大きな鳥が時々、川を悠々と越えて渡って行く。
ホントに小さな蝶々が船に寄り添うかの如く、ひらひらと舞っている。
聴こえてくるのは、船のエンジン音の唸り声だけ。
時間が止まったかの様な風景。
でも、確実に太陽が少しずつ沈んで行く。
この船旅で一番の夕焼け。
今までも確かに夕焼けは見れたし、片手に缶ビールを持ちながら見ていた。
けれども、最後の最後で、一番キレイな夕焼けだった。
夕焼けはどうしてこんなに旅人をより旅人にさせるのだろう。
別に、晴れていれば、毎日見られる風景。
世界中の何処にだって見られうる風景なのに、旅先で見る夕焼け程が一番、キレイに感じられる。
そして、何だか物思いに浸れる。
そこに何も要らない。
そこに何も足さない。
次にしっかりと夕焼けが見れるのは、何処だろう…
ポルトベーリョ、無事、到着!!!!!!
乗船から130時間、出港してから120時間の20時ごろの時点で、残り、直線距離で33キロ。
1時間が過ぎた21時ごろの時点で、残り、直線距離にして27キロ。
あくまでも直線距離だから何とも言えないけれども、時速にして6キロしか進まない船が何とももどかしい。単純計算しても、ポルトベーリョへの到着は日を跨ぎそうな予感がヒシヒシとして来た。
この期に及んで、この船の旅が、ムショーに愛しく思えて来て、“早く着いて欲しいな”と言う想いと、“もう少し、この船の旅人でいさせて欲しい”と言う想いが、交差していく。
乗船してから135時間。
出港してから125時間。
日が変わった午前1時。
ようやく船がポルトベーリョの港へと吸い込まれた。
周りがざわつき、荷物をまとめ、ハンモックをしまい始める。
お世話になった人々のハンモックが次々と取り外されて行くのを見ると、ちょっと寂しさを感じる様になってしまった。
旅に出会いと別れは必需品。
コトバが分からなくて、通じ合えないコトばかりだったけれども、それでもこの船の中で唯一の日本人で、アジア人で、パッと見た目で分かる外国人。
周りの人だけじゃなくて、乗客全員がボクを認識して、そして気に掛けてくれていたのが分かる。
タバコを吸っている時も、食事の列に並んでいる時も、食事をしている時も、夕焼けを見ている時も、何処かで誰かしらが見てくれていた。
そして、目が合うと、“問題ないか?”と親指を立てて聞いてきてくれた。
そんな時間が、終わった。
長かったと言えば、ホントに長かった。
暇だったと言えば、ホントに暇だった。
でも、きっとこの旅が終わってからも、この船の旅の時間の流れ、風景、人の温もりを忘れるコトはナイと思う。
それだけボクはココが、ココにいたメンバーが、好きだったんだと、この時間になってようやく認識した。
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